凡人が誰よりも早くマーケティング力を鍛えるには、「マーケティングトレース」を取り入れることをおすすめします。マーケティングトレースとは、ブランディングテクノロジー株式会社CMOの黒澤友貴氏が提唱するマーケティング力を鍛えるためのトレーニング方法のことです。
子供の頃に空手をやっていたとき、プロの空手家のまねをしながら技術を磨いたものです。似たような努力をしてきた人も多いと思います。実は、マーケターにもプロのまねをしてトレーニングが必要だと提唱している人がいます。
ブランディングテクノロジー株式会社のCMO・黒澤友貴氏です。黒澤氏は、マーケティング力を鍛えるトレーニングとして、「マーケティングトレース」が有効だとしています。このマーケティングトレースとは、いったいどんなものなのでしょうか?
Contents
マーケティングトレースとは
マーケティングトレースとは、優れたマーケティングを行っている企業の戦略をトレースし、自社に合った形で取り入れて、成果につなげることを目的としたマーケターのためのトレーニングです。黒澤氏に言わせると、マーケティングトレースは「マーケターの筋トレ」だそうです。
マーケティングに携わる人間も、さまざまな企業の戦略を学ぶことで、戦略の引き出しが増えるのではないか?これが、マーケティングトレースが筋トレである理由です。
マーケティングトレースを始める前に
マーケティングトレースを始める前に、まずはマーケティングの目的を再確認しておきましょう。マーケティングは、商品やサービスをアピールすることではありません。
マーケティングとは、ターゲットユーザーを理解し、そのターゲットユーザーに「購入したい」「使ってみたい」と思ってもらえるようなシステムを整える活動のことです。
このことを理解してから実際にマーケティングトレースを始めましょう。
※ターゲットユーザーを理解するには、「男性と女性の考え方の違い」を理解する必要があります。男女で購買意欲は変わりますので、必ず押さえておきましょう。
男性と女性の”興味のあるほう”を先に読んでみてください。
マーケティングトレースのやり方
優れたマーケティングを行っている企業の戦略をトレースして、自社のマーケティング戦略に生かすには、どうしたらいいのでしょうか?
ここからは、マーケティングトレースのやり方をご紹介します。マーケティングトレースは、7つのステップで構成されています。
マーケティング戦略の概要を把握
優れたマーケティングを行っている企業をリサーチして、そのマーケティング戦略の概要を把握しましょう。
概要を理解することで、今、あなたが持っているマーケティング戦略の引き出しがどの程度のものなのかがわかるはずです。
マーケティングのフレームワークを分析する
マーケティング戦略をフレームワークごとに分析します。フレームワークはたくさんあるのですが、
「企業が属する業界の全体像の理解」
「ユーザーのニーズの把握」
「市場環境の理解」
などに注視してフレームワークの分析を進めます。
フレームワークはマーケティングトレースの重要なポイントなので少し詳しく説明しましょう。
- PEST分析
PESTは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)を表します。ビジネスを取り巻く環境について分析します。 - 3C分析
3Cは、Customer(顧客)、Company(自社)、Competitor(ライバル社)を表します。マーケットにおける強みと弱みなどを分析します。 - 4C分析
4Cは、Customer Value(顧客価値)、Convenience(利便性)、Communication(対話)、Cost(コスト)という、顧客の立場での分析です。 - SWOT分析
SWOTも強みと弱みの分析ですが、こちらは外的要因や内的要因に分けて分析し、それを基に戦略を考えます。
さらに詳しく分析する
企業が掲げる経営理念、ビジネスモデルなどを理解できるよう、さらに詳しく分析を進めます。マーケティング戦略をトレースするということは、ただ真似るということではありません。
ただの模倣では、マーケターとしての能力を鍛えるトレーニングにはなりません。このステップでは以下のような分析を行います。
- 4P分析
4Pは、Product(製品)、Price(価格)、Place(場所)、Promotion(プロモーション)という視点で製品がどれぐらいの価格でどこを通って販促すればいいのかを分析します。 - STP分析
STPは、Segmentation(分類)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)を表します。ユーザーを分類し、ターゲットを絞り込み、そのターゲットに商品やサービスを届けるためにはどんな方法でアプローチすればいいのかを分析します。
連動性があるか分析
マーケティングは企業全体で行うものです。マーケティングの部署だけではなく、開発や広報などとも連携してマーケティングは進めていかなければなりません。トレースしているマーケティング戦略に、この連動性があるかどうかチェックしてみましょう。
どうして成功したのかまとめてみる
その企業のマーケティング戦略が成功した理由を書き出してみます。書き出すことが重要です。成功した理由を書き出してみると、これを見ながら自分なりの戦略を立案することに役立ちます。
マーケティングトレースはトレーニングですから、文字にして書き出し、目で見て確認することで、実戦で使えるマーケティング脳を作っていくことが重要です。
自分がその企業のマーケティング責任者だったら
ここまでの作業で、マーケティング戦略を考える力はかなり身についているはずです。
いよいよ、これまでのリサーチで理解し、そして身につけた力を使って、お手本にした企業のマーケティング責任者になったつもりで、いくつか異なるパターンのマーケティング戦略を考えてみましょう。
繰り返す
ひとつの企業のマーケティング戦略をトレースしただけでは、実戦的なマーケティング思考を身につけることはできません。そのため、マーケティングトレースは、定期的に、繰り返し行うことが重要です。
繰り返しマーケティングトレースを行い、かなり思考力が身についてきたと感じられたら、そのときがオリジナルのマーケティング戦略を組み立てるときです。
言語化や図式化がマーケティングトレースの肝
マーケティングトレースは、ご紹介してきたような流れで行いますが、その流れの中で重要なのが、分析したことを言語化したり図式化したりして、ひと目で理解できるようにすることです。
マーケティングトレースにおける分析作業はシンプルなものですが、それを言語化したり図式化したりすること自体が「筋トレ」なのだと黒澤氏は言っています。
この筋トレを繰り返し、状況に応じて瞬間的に自らのマーケティング戦略に落とし込めるかどうかが勝負になるのです。言語化や図式化は、マーケティングトレースの肝と言ってもよいでしょう。
マーケティングトレースは勉強会におすすめ
マーケティングトレースはトレーニングですから、もちろんひとりで行ってもいいのですが、集団で行うことも可能です。
たとえば、企業内で勉強会を開き、そこでマーケティングトレースをするのは、非常によいアイデアです。マーケティングトレース向けのワークシートも数多く公開されているので、同僚と一緒にトレーニングしてみてはいかがでしょうか?
最後に
マーケティングトレースは、黒澤氏によると、マーケティング思考を身につけるための筋トレです。個人で取り組んでもよし、グループで取り組んでもよしのマーケティングトレーニングです。
しかし、マーケティングトレーニングはあくまでトレーニングであり、このトレーニングをとおして身につけた思考により立案した戦略が、必ずしも効果的な戦略であるとは限りません。
実際にあなたの会社のマーケティングにマーケティングトレースを生かすのであれば、独自のリサーチも行ったうえで、その結果も考慮してマーケティング戦略を進めていくようにしましょう。