ランチェスターの法則は、第1次世界大戦の頃にイギリスのF・W・ランチェスターが、戦闘機の数と戦闘の末にもたらされた被害を、武力の差などを考慮して研究し、まとめた法則です。このランチェスターの軍事戦略をマーケティングに当てはめたものが、現在、マーケティングの世界で使われているランチェスターの法則です。
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ランチェスターの法則とは
冒頭で触れたとおり、ランチェスターの法則はイギリスのF・W・ランチェスターがまとめた軍事戦略の法則を、マーケティングに転用した法則です。
日本で、このランチェスターの法則をマーケティングの世界に当てはめ、体系化したのは、著名なマーケティングコンサルタントの田岡信夫氏です。それ以来、多くの企業がこのランチェスターの法則をマーケティング戦略に取り入れています。
それでは、まずは元々のランチェスターの法則について説明します。そのほうが、マーケティング版のランチェスターの法則を理解しやすいためです。
軍事戦略版欄チェスターの法則
軍事戦略版ランチェスターの法則には、2つの重要な法則があります。
まず、第1法則です。
- 攻撃力=武器の性能(質)×兵士の数(量)
第1法則は、大昔の戦に当てはまる法則です。大昔の戦では、刀剣などの比較的シンプルな武器が主体でした。このような戦では、兵士の数が多いほど攻撃力が強くなります。
つづいては第2法則です。
- 攻撃力=武器の性能(質)×兵士の数(量)×兵士の数(量)
第2法則では、近代戦のような銃などの飛び道具が武器として想定されています。このような戦では、武器の性能×兵士数の2乗が攻撃力になります。
しかし、なぜ飛び道具を使うと「兵士数の2乗」になるのでしょうか?
第1法則の解説
第1法則では刀剣を使って戦うため、必然的に接近戦になります。一方の兵士数が200人、もう一方が100人だったとしましょう。武器の性能が同じだと、どちらも100人が戦うと、50対50の結果になります。この時点で兵士の数は150対50です。
次に残った兵士50人ずつが戦うと、武器の性能は同じですから、やはり双方とも25人が勝ち残ります。この時点で兵士の数は125対25です。これを繰り返せば兵士数が多い陣営の勝利は必然です。
第2法則の解説
では、第2法則の長距離戦の場合を考えてみましょう。
双方の兵士の数は、先ほどと同様の200対100です。双方とも銃を持った兵士が等間隔で並びます。全員が同時に戦うという点が、接近戦とは明らかに異なります。
200人の兵士を持つ陣営は、2人の兵士で1人を倒せばよい計算になります。一方、100人の兵士を持つ陣営は、1人の兵士が2人を倒さなければなりません。1人を倒すとすると、0.5人という計算になります。0.5人で相手の兵士を狙うため、この両陣営には4倍の戦力差があることになります。
したがって、第2法則では兵士の数の2乗をかけます。
マーケティング版ランチェスターの法則
マーケティング版ランチェスターの法則で鍵になるのは「強者」「弱者」という概念です。マーケティング版ランチェスターの法則では、大手企業を強者、中小企業などを弱者と考え、大手企業は強者ならではの戦略を、中小企業などは弱者ならではの戦略を用いれば、良い戦いができるとしています。
マーケットシェアで考える弱者と強者
あなたの会社が弱者なのか強者なのかわからない場合は、マーケットシェアを確認してみましょう。
業界内で安定したシェアを得ているようであれば、あなたの会社は強者です。マーケットシェアでいうと26.1%が弱者と強者の境目だといわれています。
この数値よりもやや低いようであれば、業界内にライバルがひしめき合っているような状況かもしれません。マーケットシェアが10%より上なら、うまく立ち回ることで大きなシェアを得られる可能性があります。
それでは、マーケティング版ランチェスターの法則を用いた戦い方について解説していきます。
弱者は第1法則で戦う
ランチェスターの第1法則を応用することで、中小企業も零細企業も、競争の激しいマーケットで強者と対等に戦うことは可能です。
第1法則は接近戦でした。弱者である中小企業や零細企業の兵士(社員)の数は、大企業の兵士の数にはまったく及びません。当然ながら、強者と同じことをしても兵士の数が違うので、このままでは戦いになりません。いずれ負けてしまうことは目に見えています。
そこで、弱者が考えるべきなのが接近戦です。強者が弱いニッチなところを攻めるのです。ニッチなマーケットであれば、商品やサービスのクオリティを高めることで、弱者でも十分に勝負になります。ニッチなマーケットなら、強者よりも兵士を集中させることで、強者を圧倒できる可能性があるのです。
この戦い方なら、ニッチなマーケットではなくても、ひとつのマーケットに兵士を集中させることにより、強者を圧倒することすら可能です。
強者は第2法則で戦う
弱者である中小企業や零細企業は、第1法則の戦い方に持ち込むことで強者である大企業と対等に戦える可能性がありますが、それでは大企業はどうやって戦えばいいのでしょうか?
その答えは第2法則にあります。兵士の数に勝り、武器である資金力、ブランド力に勝る大企業は、接近戦ではなく、距離をとった戦いが基本になるでしょう。
中小企業は第1法則を活用した「ニッチなマーケット」や「一点集中」で攻めてくるわけですから、強者は弱者が得意としない戦略で攻めるべきなのです。具体的には、テレビや新聞などのメディアを利用した大規模な広告戦略が挙げられます。
ランチェスターの法則・弱者と強者の取るべき戦略比較
ランチェスターの法則では、強者は強い者なりの確実な戦い方、弱者は弱い者なりの差別化を図る戦略で、競争の激しいマーケットを戦い抜くのが基本です。以下にランチェスターの法則に基づいた、弱者と強者の戦略をまとめました。
弱者がとるべき戦略 | 強者がとるべき戦略 |
・差別化に注力 | ・確実性重視 |
・ニッチマーケット | ・広域戦 |
・一点集中 | ・総合力 |
・接近戦 | ・遠隔戦 |
・大将戦 | ・確率重視 |
・陽動 | ・誘導 |
ランチェスターの法則に基づいた弱者と強者のとるべき戦略の違いは、このようにはっきりしています。そもそも、マーケティング戦略を「戦い」と捉えることに関して違和感を覚える人もいるかもしれません。しかし、このランチェスターの法則は、マーケティング戦略を立案するうえでとても重要です。
立場や体力を考えなければビジネスをうまく進めていくことはできません。何も考えずに戦いを挑めば、ただその戦いの大海原に埋もれていくだけです。
資本を含む、すべてに強みを持つ大企業に真っ向から勝負を挑んでも弱者は生き残れません。
あなたがもし、個人事業主や中小企業のマーケティングを担当しているのであれば、ランチェスターの法則を考慮した、自らが有利に戦いを進められる戦法を模索すべきではないでしょうか?
補足
弱者が取る戦略の1つに「ニッチマーケット」があります。このことを勘違いしている人が本当に多いです。「ニッチ、ニッチ戦略が大事だ!」というエセマーケターの声を鵜呑みにすると、痛い目に遭います。
ニッチ戦略とは、小さな市場だけれども”確実に深いニーズ(悩み)がある”ことが前提条件です。この条件がないニッチ戦略は、ただの小さな需要のない市場に挑むことになってしまいます。このことについて、詳しく説明している投稿があるので、投稿文の「続」をクリックしてみてください。
この記事で、”一番濃い内容”が詰まっています。
最後に|強者は強者なりに、弱者は弱者なりの戦略を
ランチェスターの法則について紹介しました。ビジネスの世界では、弱者でもうまく立ち回ることで強者に対抗することが可能です。あなたの会社は、弱者なりの戦略、強者なりの戦略がとれているでしょうか?ぜひチェックしてみてください。
追伸
私は弱者のランチェスター戦略を用いて、ブログ戦略を設計しています。
おかげで、たった9ヶ月で6.3万PV数を集めるブログに成長させることができました。Webマーケティングの王道である「ブログ集客」の考え方をこちらの記事「アクセスが集まるブログ記事の書き方【現役ライターのSEO戦略】」にて解説しています。ぜひ、ブログにおける”弱者のランチェスター戦略”を参考にしてみてください。