これまで「文章力が重要である」という認識は、一部の人しか持っていませんでした。しかし昨今、文章の勉強は全人類の必修科目となっています。
新型コロナウイルスの流行により在宅ワークが浸透し、テキストを使ったコミュニケーションの場面が急速に増えたからです。“デキる人”の定義に「文章力がある」が加わったと言っても良いでしょう。
今回はメール・報告書・ブログ記事・SNS投稿など、ビジネス文書を作成する際の点数の上げ方を以下3つの観点から解説します。
- 読みやすさ
- 理解しやすさ
- 主張の納得感
これまでは「口達者」な人に有利な時代でしたが、今後は「筆達者」な人に有利な時代が訪れます。90点をとれる文章の書き方を身に付け、市場価値を高めるために本記事をご活用ください。
Contents
素人文章と基本ルールを押さえた文章の違いとは?
文章力アップは、ライターやブロガーにのみ恩恵があるわけではありません。
会社員であれば、文章が上手くなると以前よりスムーズに仕事が回ります。基本を押さえた文章を書ければ、周囲はあなたの意図をすばやく正確に理解し、あなたを全面的に信頼して行動するようになるからです。
素人まる出しの文章だと、そうはいきません。
「これはどういうことですか?」
「補足資料をいただけますか?」
「根拠となる事例はありますか?」
あなたが書いたあらゆる文章にいちいちツッコミが入ります。それを解消し、読者の心にすっと入る文章を目指すなら、以下の9つのルールを意識してください。
- 本題を最初に述べる
- 一文一意を意識して、一文を短く切り詰める
- こそあど言葉を減らす
- 根拠を示して納得感を高める
- 読む人に合わせて言葉を選ぶ
- 意味の切れ目に読点を入れる
- 修飾語と被修飾語を近付ける
- 逆接表現を連続して使わない
- 伝わりづらい文章は例え話を混ぜる
例文を交えて順番に解説します。
誰でも90点をとれる文章の書き方
ビジネスシーンで消費される文章は「読みやすさ・理解しやすさ・主張の納得感」で評価されます。これらをバランス良く高めるための基本ルールを9つに分類してまとめました。
1つ10点として、全てのルールを意識した書き方をすれば90点の文章になる……というイメージで解説を進めます。
「残り10点は何なのか?」という疑問を持たれるかもしれませんが、それは9つのルールを紹介し終えてからお伝えします。
本題を最初に述べる
ビジネスの世界では「最初に本題(結論)を話すべき」が合言葉となっています。あらかじめ本題を共有しておくことで、何を目的にやり取りを行うのか双方の認識が一致し、無駄がなくなるからです。
これは文章の世界でも共通しています。思い付きに頼って文章を書くのではなく、あらかじめ「今から何を伝えたいのか」を明確にして、それを最初に書くのです。
悪い例
読み手は本題を述べてもらうまで「なぜこの文章を読まされているのか」が理解できず、何に注意して文章を読み進めれば良いのか分かない。先の読めない展開がワクワクを生み出す小説とは違い、ビジネス文書は最初にネタバレを入れた方が理解しやすいのだ。だから、文章を書くときには本題を最初に述べるべきである。
良い例
文章を書くとき、本題を最初に述べることが大切だ。読み手は本題を述べてもらうまで「なぜこの文章を読まされているのか」が理解できず、何に注意して文章を読み進めれば良いのか分からない。先の読めない展開がワクワクを生み出す小説とは違い、ビジネス文書は最初にネタバレを入れた方が理解しやすいのだ。
どちらの例文も「本題を最初に述べよう」という主張と「なぜ本題から述べるべきか」という理由を語っています。
しかし、内容はほぼ同じであるにもかかわらず、より早く“この文章が言いたいこと”が伝わったのは後者だったはずです。
このあと紹介する8つのルールも重要ですが、一番重要なルールは「本題を最初に述べる」なので、ここだけは必ず押さえてください。
一文一意を意識して、一文を短く切り詰める
読みやすい文章を書く心得として、一文一意という教えがあります。言い換えると「一文に込めるメッセージを1つに絞ろう」です。
一文一意を守ると一文が短くなり、文章の構造がシンプルになります。結果として、長い文章を読むことが苦手な人でも、より簡単に文章の意図を汲み取れる文章に仕上がるのです。
悪い例
ビジネス文書に小説のような流麗な文章は必要なく、読みやすく理解しやすい文章のルールを押さえて、納得感をプラスする工夫をすれば誰でも90点を目指せます。
良い例
ビジネス文書に、小説のような流麗な文章は必要ありません。読みやすく理解しやすい文章のルールを押さえて、納得感をプラスする工夫をすれば誰でも90点を目指せます。
一文であれもこれも伝えようとせず、メッセージを小分けにして伝えた方が理解しやすいのです。また、文章の読みやすさを重視するとき、一文の長さは60字以内、長くとも100字以内が望ましいと言われています。
一文が長く、一文一意を守れていない文章は、理解するために何度も読み直さなければなりません。「この文章どういう意味だ?」と冒頭から読み返す羽目になると、読み手はストレスを抱えます。
誰に見せても「読みやすい」「理解しやすい」と言ってもらうために、一文に込めるメッセージを減らして、一文を短く切り詰めることを意識してください。
こそあど言葉を減らす
こそあど言葉(指示語)は、適度に使えば文章に良いリズムを与えます。しかし、こそあど言葉を連続して使うほど、文章は抽象的になってしまいます。
ビジネスのための文章は、美しさよりも伝わりやすさが重要視されるため、こそあど言葉は「何を指して使われているか分かる場面」でのみ使うべきでしょう。
悪い例
田中さんの文章は分かりやすい。それは会社中の皆が知るところだ。そうなるための基本ルールは、『SALES BRANDING BLOG』というブログに載っているらしい。
良い例
田中さんの文章が分かりやすいことは、会社中の皆が知るところだ。分かりやすい文章を書くための基本ルールは、『SALES BRANDING BLOG』というブログに載っているらしい。
悪い例で挙げたような、こそあど言葉を続けた書き方をすると、具体的に何を指しているのか分かりづらくなります。加減が難しい場合には、一切こそあど言葉を使わない文章もアリです。
根拠を示して納得感を高める
たとえば、大手企業でも人員削減を行う現状を知る相手に「今後は正社員でも安定はない」と言ったときには、すんなりと「そう思う。いつ失職するか分からないよね」と理解を示してくれます。
しかし、未だに正社員は生涯安泰だと信じる人に向けて「今後は正社員でも安定はない」と伝えるときには、なぜ正社員でも危ういのか根拠を添えなければ信じてもらえません。
つまり、やり取りの際に根拠を示さなくても相手に納得してもらえる場面と、根拠を示さなければ相手が納得しない場面があるのです。
悪い例
今後は正社員でも安定はない。
良い例
今後は正社員でも安定はない。事実、多くの上場企業が希望退職を募り、数百人、数千人規模の人員削減を進めている。経団連会長やトヨタ社長が「終身雇用の限界」に言及したことも記憶に新しい。
実際の出来事、公表された統計結果、権威ある人物の発言などを付け加えれば納得感が高まります。
全てに根拠を添えると不必要に長い文章となるため、一文ずつ「この文章には根拠を加えるべきか」を見極めて、どのくらい補足情報を入れれば相手を納得させられるのか考えて書くことが大切です。
読む人に合わせて言葉を選ぶ
「あの案件はフィックスしましたか?」
「これはジャストアイデアなのですが」
どちらも、意味が通じる人もいれば、全く通じない人もいるビジネス用語です。フィックスは「確定・決定」、ジャストアイデアは「思い付き」の意味で使われていますが、一般に定着しているとは言えません。
これらの言葉を普段使いする者同士なら、文章でのやり取りに使っても問題ないでしょう。しかし「この言葉を相手が知っている確信はない」と判断したときは、より一般的な言葉を使うべきです。
悪い例
〇〇の案件はフィックスしましたか?
良い例
〇〇の案件は確定しましたか?
前者は相手を戸惑わせる可能性がある一方、後者はほぼ確実に正しく理解してもらえます。
意味の切れ目に読点を入れる
「ここではきものをぬいでください」という、読点に関する有名な例文があります。この一文は、読点の挿入箇所によって意味が変わるのです。
- ここで、はきものをぬいでください
- ここでは、きものをぬいでください
前者は履物(靴)を脱ぐように指示し、後者は着物(服)を脱ぐように指示する文章となっています。仮に読点がなければ、どちらの意味で捉えるのか読者次第となってしまい、正しく意図を伝えられないのです。
ライターや作家でもない限り、読点の位置にこだわる人は多くありませんが、良い文章を目指すなら「意図通りメッセージが伝わるか」に配慮して読点の使いどころを決めましょう。
修飾語と被修飾語を近付ける
修飾語(他の部分を詳しくする部分)と被修飾語(詳しくされる部分)を近付けることで、正しく意味が伝わりやすい文章になります。
たとえば、以下は「文章の書き方を」が修飾語、「勉強しています」が被修飾語です。しかし、悪い例では「私は」の存在により、わずかですが修飾語と被修飾語が離れてしまっています。
悪い例
文章の書き方を私は勉強しています。
良い例
私は文章の書き方を勉強しています。
悪い例でも意味は通じますが、良い例の方がすんなりと文章の構造を理解できたのではないでしょうか。この程度の簡単な文章でも違いが見られるため、一文が長い場合にはなおさら顕著に効果があらわれます。
逆説表現を連続して使わない
逆接とは、直前に述べた内容を覆すための表現です。以下の赤字部分は逆接表現の一例です。
- 説得したが(けれど)、彼は従わなかった。
- 練習した。しかし(だが)結果は出なかった。
逆接そのものは、物事の関係性をあらわすために役立つ表現なのですが、逆接表現を続けて繰り返すと読み手は混乱します。
悪い例
英語を習った。だが、話せるレベルにはならなかった。しかし、語学を学んだ経験を無駄とは思わない。挑戦には失敗したのだが、新しい知識を学ぶ楽しさを知れたからだ。
良い例
英語を習って話せるレベルにはなれなかったけれど、語学を学んだ経験を無駄とは思わない。新しい知識を学ぶ楽しさを知れたからだ。
一文が短かったとしても、逆接表現が増えると理解しにくい文章が出来上がります。
また逆接表現が多すぎる場合は、なくても問題ない文章が隠れている可能性があります。悪い例で言うところの「挑戦には失敗したのだが」は、なくても意味が通じます。
伝わりづらい文章は例え話を混ぜる
ここまで紹介したルールを駆使しても、分かりやすい文章が完成しないときは“例え話”を混ぜてください。
例え話には2つの種類があります。
- 物事の構造を置き換えて解説する例え話
- 読者に想像させて伝達力を高める例え話
前者は、ある物事の構造を別の事柄に置き換えて解説するやり方です。以下のように“構造”に着目して、同じことを別角度から説明する方法です。
「SNSで無差別に副業勧誘のDMを送る人はヤバい。本人はビラ配り感覚かもしれないが、ベルを押してインターホン越しに『この副業を始めませんか?』と言われるくらいに、受け取る側はギョッとする」
一方、後者は“ただの説明”に例え話を加えることで、より読み手に具体的なイメージを想起させるやり方です。過去の私のツイートに、ぴったり当てはまる投稿がありました。
これら2種類の例え話を混ぜられれば、一段と高いレベルの文章に仕上がります。
最後に|行動させる文章を覚えれば100点越え
9つの基本ルールを押さえて、読みやすさ・理解しやすさ・主張の納得感を高めても90点なら「残り10点は何だ?」と思われたはずです。
残り10点は、文章に“行動させる力”を与えることで埋まります。それどころか、行動させる文章を追求すれば読者の心に感動を生み、文章の評価は150点にも200点にもなるのです。
その魅力に気付いたからこそ、私は「行動させる文章の専門家」とも言えるセールスライターとして活動し、第一線で鍛錬を続けています。
残り10点の文章力を習得し、本業やあなた自身の事業に活かすための方法は、当ブログにちりばめました。すぐに文章のレベルを上げたいなら、1秒で実践できる以下記事の方法がおすすめです。
衝撃の追伸
偉そうに色々と語ってしまったのですが、実はWebライター駆け出しのころはクライアント様を激怒させてしまったことがあります。
もしあなたが駆け出しのWebライターorこれからWebライターを志望するのであれば、下記の記事を読むことをオススメします。
【例文9選】Webライターがクライアントをガチ切れさせた文章の書き方
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