マーケティングでよく使われる「ベネフィット」と「メリット」。意外にも多くの方が意味を混同して使っています。意味を履き違えたまま使うと、知らないうちに恥ずかしい思いをしてしまうかもしれません。
この記事では、マーケティングの基礎概念・ベネフィットとメリットについて解説しています。ベネフィットとメリットの違いを即答できない方は、このまま読み進めてみてください。
Contents
マーケティングにおける「ベネフィット」と「メリット」
「ベネフィット」とは本来、「利益」や「恩恵」という意味の言葉です。しかし、マーケティングの世界では「ユーザーが商品やサービスから得られるポジティブな効果」のことを指します。利益や恩恵であることに違いはありませんが、ユーザー視点になっていることがポイントです。
「メリット」とは本来、「利点」や「長所」という意味の言葉です。しかし、マーケティングの世界で「メリット」という場合、利点や長所でも、商品やサービスの利点や長所を指します。メリットは、ユーザー視点ではない、ビジネス都合の利点や長所です。
140文字で簡潔にお伝えすると、
- ベネフィット=主語が「人」
- メリット=主語が「商品」
このように押さえておくと、忘れにくいと思います。
商品やサービスのマーケティングを行う際に、どちらが重要なのかは一目瞭然です。会社の都合で物事を考えてもマーケティングがうまくいくはずがありません。ビジネスの都合が商品やサービスに反映されるということではなく、メリットがユーザーにもたらした結果がベネフィットとなれば理想的です。メリットとベネフィットにズレがあると、その商品やサービスはうまくいかないでしょう。
マーケティングにおいては、ユーザーにメリットを伝えるだけではなく、ベネフィットを伝えることが重要です。ベネフィットを伝えることではじめて、ユーザーの心を動かせます。
ベネフィットとメリットの例
たとえば、シャープペンシルと赤黒2色のボールペンが一体になった筆記用具があるとしましょう。
この筆記用具のメリットは「シャープペンシルと赤黒2色のボールペンが1本にまとまっていること」です。
では、この筆記用具のベネフィットは何かというと、「バッグやケースの中がすっきりして使いやすくなること」でしょう。
もうひとつ例を挙げておきましょう。
自動で部屋を掃除してくれるロボット掃除機。このロボット掃除機のメリットは、まさに「自動で部屋を掃除してくれること」です。
では、ロボット掃除機のベネフィットはなんでしょうか?ベネフィットはユーザーが得られるポジティブなことですから、「掃除に費やす時間が短くなる」「部屋が片付く」などでしょう。※部屋が片付くというベネフィットの解説(ロボット掃除機は多少の段差程度なら問題なく越えていけますが、物がたくさんあると掃除できる範囲が限定されるため、ユーザーは必然的に部屋を片付けることになります。部屋が片付くことはロボット掃除機を導入した結果なので、これはベネフィットだといえるでしょう)。
覚えておきたいベネフィットのタイプ
マーケティングの世界における「ベネフィット」にはタイプがあります。著名な経営学者デイヴィッド・アーカーは、ベネフィットを3つのタイプに分けて説明しています。
①Functional Benefit(機能的ベネフィット)
その名のとおり、商品やサービスのファンクション(機能)によるベネフィットのことです。「時間が節約できる」など、メリットと強い相関性があるベネフィットが、この機能的ベネフィットです。
②Emotional Benefit(情緒的ベネフィット)
商品やサービスを手に入れることにより受けられる感情的、情緒的なベネフィットのことです。商品やサービスにより得られる「信頼感」などのユーザーが感じる感情の変化が、この情緒的ベネフィットです。
③Self-expressive Benefit(自己表現ベネフィット)
商品やサービスを手に入れることにより、たとえば、「充実した人生」が手に入れられるなど、ユーザーのライフスタイルにまで至るような、非常に大きな良い変化…これが自己表現ベネフィットです。先に紹介した情緒的ベネフィットに通ずるものがありますが、情緒的ベネフィットよりもスケールの大きいベネフィットだといえるでしょう。
補足|ベネフィットはキャッチコピーに使える
商品やサービスを販売することにおいて、ベネフィットを含んだキャッチコピーと、含まないキャッチコピーとでは「売上は雲泥の差」です。ただ、キャッチコピーというと”専門的な技術”と思う方が多いと思いますが、売れる型がありますので「保存版!今すぐビジネスに使えるキャッチコピー」を参考にしてみてください。
ベネフィットやメリットに似た言葉
ベネフィットやメリットに似た言葉は、実はまだあります。
アドバンテージ
アドバンテージは、何かと比較した際に「有利」な立場にあることです。サッカーやラグビーなどの球技では、ファウルがあったけれどもファウルを受けた側が有利な立場に回っている状態でアドバンテージが宣言されプレーが続けられます。アドバンテージは、まさに優位に立っている状態のことを言います。
プロフィット
プロフィットは、ベネフィットに近い言葉ですが、こちらは利益は利益でも、はっきりお金の利益です。そのため、やはりベネフィットとは異なります。
マーケティングでベネフィットを定める際のポイント
これまでにお話ししてきた内容で、商品やサービスのメリットを考えるだけではなく、そのメリットによりユーザーが得られるベネフィットをうまく伝えることが重要なことだとお分かりいただけたと思います。ここからは、そのベネフィットを定める際のポイントについて説明していきます。
ターゲットユーザーが抱える問題を突き止める
ベネフィットは、ユーザー視点の前向きな要素ですから、ユーザーがどんな悩みや問題を抱えているのかを特定する必要があります。それらの悩みや問題を解決すること自体がユーザーにとってのベネフィットだというわけです。
ユーザー像、ユーザーが抱えている悩みや問題は、可能な限りはっきりさせましょう。特にユーザー像が曖昧だと、その悩みや問題も明確にできません。※ユーザー像の設定に自身がない方は「初心者が学ぶ、ペルソナ設定」をご参考ください。
「誰」が商品やサービスの典型的なユーザーなのかをはっきりさせたうえで、彼らの持つ悩みや問題を慎重に特定していきます。
共感、そして悩みや問題解決のための展開を考える
ターゲットユーザーが持つ悩みや問題を特定したら、ターゲットユーザーの共感を得るためのストーリーを考え、商品やサービスが持つメリットを伝えていきます。ここでユーザーの共感を得ておくことで、次のステップが容易になります。
ターゲットユーザーにベネフィットを示す
ターゲットユーザーの共感を得て、商品やサービスのメリットを伝えたあと、いよいよベネフィットを示します。
この際、重要なのが「ユーザー視点」です。この記事でも繰り返しているとおり、ベネフィットはユーザー視点のものなので、あくまでユーザー視点で伝えることが重要です。商品やサービスが主語になるのではなく、ユーザーが主語の文章にします。
一人称で伝えてしまうと、それは説明してきたとおり、ビジネス視点の文章になってしまいます。すなわち、メリットです。一人称では、ターゲットユーザーに響きません。
せっかくターゲットユーザーの共感を得たところなのですから、ここはしっかりユーザー視点の二人称で文章を書き、ターゲットユーザーの心に響かせることが重要です。
最後に|ベネフィット訴求でビジネスを正しい方向へ
マーケティングの施策を進めていくうえで、ベネフィットをしっかり伝えることは、とても重要です。ビジネス側の都合で商品やサービスを考えていても、この時代に成功は望めません。商品やサービスによってユーザーが得られるベネフィットをしっかり伝えられれば、ビジネスは自ずと正しい方向へと向かうはずです。
追伸
ベネフィットをもう少し深堀したい方は、こちらの記事「確実に男性ファンを集客するターゲットマーケティング」をご覧ください。
ベネフィットの使い方(言葉選び)によって、男性と女性に響くキーワードが違います。男性脳と女性脳を理解したうえで、ベネフィットを訴求していきましょう。